《シロ》

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 屋上で知り合って以来、校内でよくシロの姿を見かけるようになった。  成績優秀、スポーツ万能。  独特の雰囲気に端正な顔立ち。  形容するなら『クールビューティ』。  が、時折見せる甘えた。  故に、決して派手ではないが目立つ存在だった。  そして何より、 「たま、えーご貸して」 何かにつけて、卓の教室にやってくるのだった。 「あ?英語もかよ。」 ぶちぶち言いつつも、テキストを差し出す。 「ありがと」 英語を受け取りながら、現国を返却する。 「お前がいつも抱えてる鞄には一体何が入ってんのか知りてーよ、」 「キャンディ。いる?」  真顔で首を傾げながら、確かここにあったはず…とポケットを探り始める。 「いらねぇし。ほら、予鈴なるぞ」  しっしっと猫でも払うように追いやると、うまいのに、と口を尖らせながら自分の教室に戻っていった。  変な奴に懐かれちまった…  そう思いながら、シロの後ろ姿を見送った。 .
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