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「自由を我らに…」
ブーブーブー…
「だから、自由を我らにだってば!」
ブーブーブー!
やっとゴールだというのに、あたしは最後の難関に引っかかってしまっていた。
「ちょっと、どういうことよ?部屋に入れないじゃないの!」
自分に対するなんとも言えない苛立ちと、早く部屋に帰りたいのに入れない苛立ちが重なって、フヨに八つ当たりしていた。
「佳代ちゃんの言い方が悪いんだよ」
「ちゃんと言ってるよ!」
「初めは元気なさすぎて判別できなくて、二度目は違う言葉混じってたでしょ」
なに、この機械?高性能なのか、そうでないのか、一体どっちなの?
こんな時に明るく元気に「自由を我らに!」なんて言えるわけない。
もちろんフヨにも言わせようとしたけど、どうやらマネージャーの声は対象外らしく、あっさり却下された。
発声が悪いとか発音が悪いとか、切るところが違うとか、挙句の果てには感情がこもっていない、という理由でことごとく却下され、12回も言ったのにドアは閉じられたままだった。
合言葉が合言葉なだけに、何度も連発すると自分がバカらしくなってきて、回数を重ねる毎に元気がなくなっていく。
先に合言葉を変えたほうがいい。こんな言葉真面目に言えない。言えば言う程やる気がなくなる。と、考えていたちょうどその時、救世主が現れた。
「自由を我らに!」
あたしとフヨの後ろから聞こえたその声は、まさに完璧だった。これなら声優さんになれるかもしれない。
ピーンポーン!
機械はすんなりとその声を受け入れ、部屋の扉を開けてくれた。
「どうぞ。ちょっとコツがいるんだよ、これ」
振り返ると、そこには小学生くらいの少年がいた。
鈍いあたしでも一目で彼が死神だと分かる。だって、フヨと同じ種類の生物(?)が少年の周りをグルグル飛んでいたから。
フヨはというと、驚きと脅えが入り混じったような目で彼らを見て、「なんで…」と小さくつぶやいたようだった。
「佳代さんだね。話は聞いてるよ。立ち話もなんだから中で話そうか」
そう言って、少年は自分のパートナーを引き連れて部屋に入って行った。
なんて大人びた少年だろう。あたしより全然大人っぽい。ぼーっと見送っていると、機械から発せられた、恐ろしい声が聞こえた。
びーびー!閉じます、閉じます。
「やめて!!」
あたしは慌てて少年を追いかけた。
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