死神のお仕事(Ⅲ)

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ざわざわ。 「今日さぁ、あの現国のハゲのカツラがさー、」 がやがや。 「なあ、数Ⅱの宿題やった?あれっていつ提出だったっけ?」 ざわざわ。 ちょうど下校時刻だったようだ。何人かのグループになった学生達が、今日起こった様々な出来事を友達に報告し合いながら、正門の傍にある花壇の縁に座っているあたしとフヨの前を、楽しそうに通り過ぎて行く。 あたしからは見えているのに、学生達にはあたしは見えていない。とても不思議で奇妙で、そして新鮮だ。 あたしは近づいて、彼らの前で手を振ってみたり、彼らの体を通り抜けたりしてみた。 何度もやってみて、あることに気がついた。見えていないはずなのに、不自然にあたりをキョロキョロ見渡したり、感じられるはずもないのに、あたしが通り抜けると鳥肌が立ったり、寒気をうったえる人がいる。 きっとこれが霊感なんだ。でも、ほとんどの人がそんな様子もなく平然としていて、相変わらずおしゃべりをしながら楽しそうに下校して行く。 ふっと生前の記憶が頭をかすめた。あたしにもこんな時があった。毎日がとても幸せで、とても充実していたんだ。 戻りたい。もう一度生きたい。そう思わないこともない。だけど、何か大きなものがその思いを邪魔する。 戻ってはいけない。戻れない。絶対に。 そんな気持ちになる。 でも結局は、戻りたいと思ったとしても戻れるはずがない。だって、あたしはもう死んでるんだから。 あたしが死んだ時、みんな悲しんでくれただろうか?ちゃんとお葬式に来てくれたんだろうか?親友のユキ、担任の佐藤、そして…そして……。 「かよはいつもずれてるよな」 あれは…あの低くて穏やかな、それでいて優しいあの声は……。
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