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そのときは突然やって来た
休日ともあって美香子は家の中で遊んでいる
外は雨が降っているからだ
二人がリビングにいると家の電話が部屋中に鳴り響いた
叔母が受話器を取る
「はい、もしもし~。はい、そうですけど?…えっ!?はい、はい、……はい。分かりました!!すぐ行きます!」
叔母は受話器を置くと怒鳴り声に近い声で叫んだ
「美香子!!早く出かける支度して!!!」
美香子は訳が分からなかった
だが普段は優しい叔母のただならぬ様子を感じ、言われたとおり出かける支度をした
家を出ると叔母は美香子を自分の車の助手席に乗せ、エンジンをかける
「ねぇ、どうしたの?」
美香子が運転席の叔母に向かって聞く
「…………」
叔母は焦っていた
「ねぇ!!」
美香子が強く言うと叔母は美香子をチラリと見た
そしてゆっくりとした口調で口を開いた
「美香子…あのね、…あのね、みんなが乗ってた飛行機が事故にあったの…。分かる?」
分かるわけがない
美香子はまだ5才の子供なのだから
それからの車内は終始無言
美香子は窓の外の流れる景色をただじっと見ていた
車が止まりついた場所は都内の総合病院だった
叔母は急いでいたため美香子を歩かせることなく、抱えたまま院内へ走った
病院内が慌ただしい
恐らく美香子たち以外の関係者だ
警官や救急隊の姿も見える
「あ、あの!!」
叔母は受付に行き自分たちが呼ばれたことを伝えた
すると受付の女は近くにいた警官に声をかけ、二人をある場所へ連れていくよう話した
二人が連れて行かれた場所は院内の一室
そこには二つ並んだベットが置かれていた
「ご確認をお願いします」
警官は叔母をベットの方へ促す
美香子も着いていこうとした
「美香子、ここで待ってなさい」
叔母は美香子が来るのを拒んだ
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