83人が本棚に入れています
本棚に追加
裕二がリビングのドアを開きながら
『行ってきます』
『はぁ~い
行ってらっしゃい
ボリボリバリバリ』
リビングのソファーで寝転んだまま
ワイドショーを観て笑いながら
煎餅を口に挟み
富美子が裕二を見送る
裕二は玄関のドアを開け
小さな車に乗り込む
大きな身体には
軽自動車は拷問だ
運転席に座り
シートベルトを絞めれば
こりゃまた
紐で縛られた
チャーシューの出来上がり
しばらく走っていると
暖房も使ってないのだが…
車の窓が真っ白く曇っていく
12月の寒さの中
汗をかく裕二は
冷房をいれる始末
小さな車内で身を小さくして
車は進んでいく
コンビニではなく
スーパーに立ち寄って
菓子パンと牛乳を手にとりレジへ向かう
表示された金額は
1001円
財布から千円札と
ズボンのポケットから小銭を出そうとするが
ズボンがパンパンで
手が入らず
渋々、もう千円札をレジに置いた。
『2000円で
よろしいですか?』
『はい…』
ポケットには
静かに眠る1円玉
最初のコメントを投稿しよう!