第一章 月見酒

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「うおぉぉぉぁぎぃ!!」 「!?」 寝転んだ頭の向こうから、誰か――男の、雄叫びが聞こえてくる。 反射的にあたしは体を起こす。 さっきまで、誰もいなかったのに。 「おおおお、半平太、どうして、……」 人が、いた。 あたしが上半身を起こして振り返ったときには、膝を折り、地面をこぶしで何度も何度も叩いている、男の後姿が見えるのみだった。 地面を叩く度に、大きく体を揺らす。 そして、ちぢれた黒髪が連獅子のように踊るのだ。 黒くて、よれよれの洋服を震わせて。 ――洋服ではなく、着物? あたしは、はっと、身構える。 腰に、日本刀が差している。 時代劇? それとも、歴史マニア? けど、そんなことはどうだっていい。 あまりいい状況的によろしくないのだから。 気づかれないようにそっと立ち去ろう。そう思って片足をゆっくり後ろに下げたとき。 「誰ぜよ?」
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