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「うおぉぉぉぁぎぃ!!」
「!?」
寝転んだ頭の向こうから、誰か――男の、雄叫びが聞こえてくる。
反射的にあたしは体を起こす。
さっきまで、誰もいなかったのに。
「おおおお、半平太、どうして、……」
人が、いた。
あたしが上半身を起こして振り返ったときには、膝を折り、地面をこぶしで何度も何度も叩いている、男の後姿が見えるのみだった。
地面を叩く度に、大きく体を揺らす。
そして、ちぢれた黒髪が連獅子のように踊るのだ。
黒くて、よれよれの洋服を震わせて。
――洋服ではなく、着物?
あたしは、はっと、身構える。
腰に、日本刀が差している。
時代劇?
それとも、歴史マニア?
けど、そんなことはどうだっていい。
あまりいい状況的によろしくないのだから。
気づかれないようにそっと立ち去ろう。そう思って片足をゆっくり後ろに下げたとき。
「誰ぜよ?」
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