620人が本棚に入れています
本棚に追加
何を勘違いしたんだか、自称「坂本龍馬」は、あたしに抱きつくと、頭をガシガシと痛いくらいに撫で回す。
「そんなら、今だけ、着物貸してくれんかのう」
「はあ、何言って……」
あたしの返答を待たず、「坂本」さんは、あたしに抱きついたまま、さっきみたいに泣き始めた。
半平太、半平太、て。
誰か、大切な人を亡くしたのだろうか。
その、半平太さんって人を。
耳が痛くなるくらいの慟哭。
どうすることもできなくて、ただただ、その人の肩を抱くのみだった。
そして、あたしも泣いた。
どうしてか、今日は哀しい。
最初のコメントを投稿しよう!