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「そういやあ、名は、まだじゃったのう」
「坂本」さんはくるりと振り返り、あたしの目線に腰をかがめる。
「おんしの名ぁじゃ」
ああ、そういえば。
名乗るタイミングを忘れていた。
あたしはなんとなく気恥ずかしくて、視線をそらす。
そしてボソっと、
「……万里」
「ん?」
「だから、マ・リ!!」
「ほおお!! 海、みたいじゃのう」
「はあ?」
「坂本」さんは笑いながら歩き出す。
あたしの怪訝な目つきなんて、どうでもいいみたい。
「あめりかの言葉で、海は“まりん”言うがぜよ! 知らんがや?」
「それくらい知ってるけど」
「ほおお!! おんし、あめりかに興味があるんがや?」
「別に興味ないけど、英語ぐらいみんな習うじゃん」
「ほおおお!! おんしの生国では、みんながあめりかの言葉を習うんか!!」
驚き方が、いやに大げさだな。
生国って、なんだろうと思いながら、めんどくさいからうなずいておいた。
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