壱朝零夜:暁の娘

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 今日は別段、役割がある訳ではない。  にも関わらず、不規則な生活を送っている私が、早く起きたのは理由があった。  私は昨夜準備を終わらせて床に置いた荷物を一瞥する。  今日、私は旅に出る。  それは、各地を巡り、有り難い言葉を頂くために旅をするため。  世間ではこれを『成人の儀』と言うらしいが、私からしてみると『厄介払い』と言う言葉が当てはまるように感じていた。  私の名前はレーメ。  しかし、街では名前で呼ばれる事はなく、『暁の娘』とだけ呼ばれている。  その理由は、私の髪が夜明けの空模様のように、真っ赤な暁の色をしているからだ。  昔から、暁の色は『禁忌』とされている。  そんな色をしているものだから、私は当然の如く忌み嫌われている。  近寄っただけで怖がられ、何かするだけで怒られる。  ……好きでこんな髪の色をしているわけではないのにも関わらず。  けれども、私はその扱いにもう慣れてしまい、異端の目で見られる事に何も感じなくなっていた。  気づけばそれはもう、当然の事になってしまったからだ。  だから、反対に優しくされたり、気遣われたりするのが苦手だった。  更に、私は孤児で本当の親はいない。  それが余計に私が孤立していた原因なのかもしれない。  むしろ、名前で呼ばれる事に慣れず、でもそれがただ嬉しかったのは覚えている。  ここ、孤児院に迎えられたきっかけは、私を唯一名前で呼ぶ黄昏の髪の彼だった。  まだ私が小さくて何も判らなかった頃、私は彼に見つけられて拾われたそうだ。  その時、すでに髪の毛がそれなりに生えていた私を見て、大人達は引き取る事に猛反対していたらしいが、何故か彼だけは私を引き取ろうと必死になったらしい。  街の人気者だった彼は、その魅力を以て私を引き取らせたと言う訳だ。  全く、羨ましい限り。  ……もっとも、本気でそう思ったわけではないけれども。
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