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「でもどうしてか、その丘の木はみんな真っ赤になって枯れてしまって、それからはその丘には誰も近づくことができなくなったんだって」
そんな事はもう知っていた。
けれども彼は続ける。
「その時、それを見た人は、それを暁時みたいだ、っていったんだって」
「ねえ、どうして丘はそんなことになったの?」
困らせるつもりは一切なかった。
でも、私が虐げられている理由くらい知りたくてそんな質問をした。
答えが分かって私の悪いところを直せば、こんなことはなくなるかもしれないと少しは思っていたからだった。
「どうしてだろ?」
彼は首を傾げた。
「どうしてそんなことがあったのかな……」
そしてもう一度呟いた。
気づけば、彼の視線は私の髪の毛へと向いている。
「あかつきの朝はあんなにもキレイなのにね」
そして微笑んだ。
どうしてだろうか、あの笑顔が今でも忘れられない。
そんな昔懐かしい夢を見たのがほんの数週間前だった。
『どうして?』
自ら問いかけた言葉が、頭から離れなくて私はその日、そればかり考えていて一睡も出来なかったのを覚えている。
『何故』と思う気持ちは今でも残っている。 正確に言うと、≪暁≫が忌み嫌われる理由を私自身で探してみたかった。
――そうだ、≪成人の儀≫が終わったら、私は私の幸せを探してみよう。
黄昏の温もりのような幸せを感じていたい。
虐げられる事には慣れたけど、寂しいのはやはり悲しい事だった。
いつも一人で居ようとしたけど、彼のような暖かい手を一緒に繋いでいたかった。
それだけで泣きたい気持ちや悔しい思いが薄れていたから。
その為には、≪暁≫を理解しなければならない気がした。
窓から眩い光が射し込み始めた。
私は窓を開いて日が昇る方角である東を眺めた。
≪暁≫が腐敗の色と言われる元凶となった地、東の丘を。
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