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悪戯っぽく笑うその表情は青白く照らされておりまるでこの世のモノではない様だった。
そのまま消えていなくなってしまうのではないかと馬鹿げた考えが脳裏をよぎる。
自分でも馬鹿馬鹿しいと思っているのにいつのまにか雪子をきつく抱きしめていた。
どこにも行かさないと言わんばかりに。
「え、
ちょ、
ちょっとどうしたの?
どこか調子が悪かったりするの?」
その声からはこちらを気遣ってくれる雪子の気持ちが伝わってきて
もしこの声が聞けなくなるなんてことがあったらと思うと胸が締め付けられて
離したくないと抱きしめる力が無意識の内に強くなる。
「……そんなにしたら痛いよ」
その声で我に返る。
慌てて手を解き、
すまないと一言だけ告げる。
「やっぱりさっきからちょっと変だよ。
何かあったの?」
何でもないよ、
と言おうとするが真剣な雪子の表情を見ると嘘は吐かないでと咎められてるようで
好きな女性の前くらいではいい格好をしたいものだがそれを許してくれない。
「雪子がいなくなるんじゃないかって思ったんだ。
そしたら体が勝手に動いてた」
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