人生最悪の日

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さて、話は、瞬が心の叫びを上げる数時間前に逆上る。 それは、一本の電話から始まった。 「はい、もしもし、真田です」 『あ、瞬坊?私、美音だけど…』 受話器の向こうから、鈴を鳴らした様な女性の声が伝わる。 声の持ち主は、名前を神代 美音と言う。 年齢は、瞬の十歳年上の二十六歳。瞬が幼い頃から世話をしており、瞬を「瞬坊」と呼んでいた。 瞬の方も「美音ネエ」と呼び、お互いに親しい間柄であった。 「こんな休みの日にどうしたのさ…」 『あ~…えっと……華澄さんはいる?』 華澄とは、瞬の母親である。 「母さん?いや、ちょっといないっすけど?」 瞬がそう答えると、美音は安息とも嘆息とも取れる溜め息を吐いた。 「美音ネエ?」 『……あ、あ~…そう?…わかったわ。残念だわ…色々と』 「?」 『じゃあ、瞬坊。制服に着替えて、外に出ていて。迎えに行くから』 それだけ伝えて、美音は電話を切った。 瞬は頭を捻るが、言われた通りに制服に着替えて外に出た。 それが、始まりだと知らないままに…。
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