人生最悪の日

5/19
前へ
/350ページ
次へ
(いや、無理だろ) 瞬の住む家は、住宅街の一画にある。小回りの利くスクーターならともかく、車ではとてもじゃあないが無理だ。 しかし、美音は普通の顔をして「そう?」とだけ答える。 「あ、それより…。瞬坊。早く乗って。遅れちゃうわ」 「遅れる?何が?」 「いいからっ!説明は道すがらするから」 まだ幾つか疑問が残るものの、瞬は美音に従い、車に乗り込んだ。 車内も、車体と同じく、かなり改造されていた。 「シートベルトをしっかり締めてね?」 「うん…わっ!何これ、レーシングシートって奴?ベルトもきつい位締まる」 いよいよ瞬は、この車が普通じゃない事を感じ始める。 「じゃあ、発進」 タイヤの空転音が聞こえたと感じたその時、瞬の視界が歪んだ。 「!?」 物凄いGが、瞬の身体をシートにめり込ませる。 (何!?え?何なんだ?) 全く状況が掴めない。 だが、わかる事が一つある。 それは……。 この車が、恐ろしいスピードで、住宅街を爆走している事だ。 隣りに居る美音を見ると、涼しい顔で車をコントロールしていた。「ネッ…美音ッ!美音ネエ!ちょっ…まっ…出し過ぎ!」 「?…何が?」 「スピード!ちょっと!ひゃ…ひゃくごじゅっきろぉ~っ!?」 自分の目を疑いたくなる…が、スピードメーターの針は、150を指していた。
/350ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1751人が本棚に入れています
本棚に追加