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(いや、無理だろ)
瞬の住む家は、住宅街の一画にある。小回りの利くスクーターならともかく、車ではとてもじゃあないが無理だ。
しかし、美音は普通の顔をして「そう?」とだけ答える。
「あ、それより…。瞬坊。早く乗って。遅れちゃうわ」
「遅れる?何が?」
「いいからっ!説明は道すがらするから」
まだ幾つか疑問が残るものの、瞬は美音に従い、車に乗り込んだ。
車内も、車体と同じく、かなり改造されていた。
「シートベルトをしっかり締めてね?」
「うん…わっ!何これ、レーシングシートって奴?ベルトもきつい位締まる」
いよいよ瞬は、この車が普通じゃない事を感じ始める。
「じゃあ、発進」
タイヤの空転音が聞こえたと感じたその時、瞬の視界が歪んだ。
「!?」
物凄いGが、瞬の身体をシートにめり込ませる。
(何!?え?何なんだ?)
全く状況が掴めない。
だが、わかる事が一つある。
それは……。
この車が、恐ろしいスピードで、住宅街を爆走している事だ。
隣りに居る美音を見ると、涼しい顔で車をコントロールしていた。「ネッ…美音ッ!美音ネエ!ちょっ…まっ…出し過ぎ!」
「?…何が?」
「スピード!ちょっと!ひゃ…ひゃくごじゅっきろぉ~っ!?」
自分の目を疑いたくなる…が、スピードメーターの針は、150を指していた。
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