1751人が本棚に入れています
本棚に追加
さて、瞬は気付いていないが(余裕がない)、住宅街、それも昼時の時間帯にも関わらず、人気が全く無かった。
その理由が、無線機から流れてきた。
『あ~、こちらポイントスリーどーぞ?』
声を聞くだけで、気が強そうと分かる女性の声が、無線機から聞こえる。
「こちらレッド。そちらの状況は?どうぞ」
『こちらポイントスリー。車両止め、人払い、共に完了。どーぞ』
『ポイントツーも完了してます。どうぞ』
『ポイントワンも完了よ』
続いて、キャピキャピした声と落ち着いた女性の声が、無線機から聞こえる。
「レッド了解。…みんな、ありがとうね」
『あ~、そんな事はいいんだけどさ…』
ポイントスリーがダルそうに喋り始める。
『いい加減さ、理由を聞かせなさいよ。チーム全員を使って、車両止めとか人払いとか、普通じゃないよ』
「それは…」
美音は言い淀む。が、それでいて車の運転は正確で、直角のカーブをドリフトで抜ける。その際に起る瞬の悲鳴も、激しさを増していく。
『それにさ…な~んか、男の声が聞こえるんだけど…』
声と言うより、悲鳴である。
『デートの為に、私達を使った…訳ではないでしょう?』
ポイントワンが疑問を投げ掛ける。
声は落ち着いているが、返答次第ではタダでは済まない事を、声質で伝えた。
「……彼は華澄さんの息子よ」
それだけで、全てが伝わった。
『ポイントワン了解』
『ぽ…ポイントツー了解!』
『ポイントスリー了解』
「ギャアァァァァッ!」
彼女達が、そんな会話をしている事などつゆ知らず、真田 華澄の息子である瞬は、ひたすら悲鳴を上げていた。
最初のコメントを投稿しよう!