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「……晴、依っ」
すたすたと先を歩く片割れの裾をつまむ。白いTシャツが少し汗ばんでいる。
「伸びるから」
振り向かない晴依。きゅうと唇をかむ。まんまるの肩、小さなからだ。さらさらの髪が風に揺れる。ふわりといいにおい。同じシャンプーを使っているはずなのに、晴依からは花みたいな甘い香りがする。
「こっち向いてよ」
「……嫌だ」
ぷくりとふくれた頬が見えるようだ。何を怒っているんだろう。わからない。晴依のTシャツから手を離す。
「怒らないで」
「は……?」
雨依は肩からかけた荷物の重さも忘れ、晴依に抱きついた。
「暑い」
晴依は不機嫌に肩に乗る雨依の顔を押しのける。
「だってえ、」
学校とは正反対の情けない顔。晴依はため息をつく。何で二人になった途端、雨依は甘えん坊になるかなあ。
「僕は怒ってるんじゃなくて、急いでいるの」
晴依は雨依から抜け出す。
「約束の時間に間に合わなくなるでしょ」
「……A型」
晴依は雨依の右手を握りぐいと引っ張る。
「ぶつくさ言わない」
握った手は、汗ばんでいて……少し熱かった。
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