訪問者

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 いつの間にか、外では静かに雨が降り出してきたようだった。  耳を澄ますと風を切るような雨音が絶え間なく響いている。  雨は、嫌いだ。  早く、早く、上がってしまって。 「どうぞお構いなく」  間の抜けた声に私は我にかえった。  今、何をしていたっけ。ぼんやりと思い返しながら、私は自分がリビングダイニングのキッチンに立っていることに気付く。そうだ。急に客が来たから、慌ててお客様用のカップを探していたんだった。普段客人なんて滅多にこないこの家で、それでも余所行きのカップがあったのは奇跡に近かった。
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