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上の戸棚の奥にしまわれていた装飾の華やかなカップと受け皿を取り出したところで、窓の外から聞こえてきた雨音が私の思考を鈍らせたのだ。冬の外気に吐き出される息が白く曇るように、雨音を聞いているとぼんやりとしてしまって、自分がなにをしているのか分からなくなることがたまにある。
ケトルが鳴くから、薬缶の火を止めてドリップしたコーヒーをカップに注ぐ。花が咲いたようにコーヒーの香りがキッチンに漂った。コーヒーを淹れながら、私は視線だけをリビングのソファに向ける。
「いっとくけど、今日は慶介帰ってこないかもしれないよ」
染谷と名乗った客人は所在なさげにソファに鎮座していたが、私が話しかけるとはにかむように顔を歪めた。
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