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―――受け取っちゃいけない。
見てはいけない―…
何故か、そんな気がした。
「大丈夫か?」
不安と恐怖に怯える奏に気付き、環が声をかける。
「びびるのも無理ねーよな…
もし怖ぇーならこのまま処分しても…」
「ううん!」
そう言いながら、環の手から遺書を受け取る。
「せっかく彼女が遺してくれたものだから。ちゃんと読む…」
強がってはみたものの、内心は震え上がっていた。
――…一体何が書かれているのか。
どうして私にだけ遺書を遺したのか。
一体何が目的で…
「強がんなって。」
真剣な表情で、環が言った。
「お前の悪い癖。びびりのくせに。」
そう言いながら、手に持っていた遺書にそっと、自分の手を重ねた。
「一人じゃねーから。一緒に見よう。な?」
―――あぁ。この人は相変わらずだ。
誰よりも私の気持ちを理解してくれる。
見せかけだけの優しさじゃなくて、押し付ける優しさでもなくて。
私のやりたいようにやらせてくれて、そっと助け舟を出してくれる。
そんな所が大好きだった。でも―…
奏は急に切なくなった。
『もう、彼との関係は終わったんだ。』
そう思い直す。
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