開始

2/8
前へ
/238ページ
次へ
その日。 奏は学校を休んだ。 遥香には、『たまたま気分が悪くなって』と、苦し紛れの嘘をついた。 ―――だって、どうしたらいい? 自殺した子から、突然遺書が届いて。 『あたしと一緒』って言われるんだよ? 奏は相当気が滅入っていた。 元々そんなに打たれ強い子ではない。 それが解っていた環は、一日奏の側にいてやる事にした。 ―――その行為が更に遥香の逆鱗に触れると、解っていても。 「…大丈夫か?」 近くの公園のベンチに腰掛け、環が訪ねた。 「―…大丈夫。」 顔を真っ青にしたまんまの奏が答える。 ―――それ以外、何て言えたろう? 私にはわからない。 だってどうしていいかわからない。 ただ怖くて。 震える事しか、出来なかったんだ。 環は黙って、そんな彼女の側にひたすら居続けた。 何時間こうしていたかわからない。 いつの間にか、とっくに日は沈んでいた。 でも、何時間でも環は側にいるつもりだった。 ―…それ以外、自分に出来ることが思いつかなかったから。
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!

254人が本棚に入れています
本棚に追加