673人が本棚に入れています
本棚に追加
/177ページ
「文緒はさ」
帰ろうとした矢先だった。
「……なに?」
煙草をもみ消す。
「成績良かったよなあ!」
訳が分からないが、もう一度座り直す。
「うん?」
「小さい時からずっとか?」
「うん…。高校のときに話したことあるかもしれないけど
家、父も母も忙しくて
構ってもらえなくて
誰もいなくても私は出来るんだって
親のこと見返したいと思ってたから
いい成績をとるのに必死だったの。
でも、中絶のことがあってからは
きちんと話が出来るようになって、そんな必要もなくなった。
今は結構肩の力を抜いて生きれてると思う。」
「そうか……。」
隆は複雑な表情をしている。
「妊娠のことは
辛い思いをしたけど
それだけじゃなかったんだよ。
もう大丈夫だから。
隆も楽になっていいよ。
許してあげるよ。」
おどけた口調で言った
言葉と笑顔に
隆はゆっくり頭を下げた。
最初のコメントを投稿しよう!