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「本当にごめん。
すまなかった――。」
その姿が見られただけで
もう充分だ。
「来て良かったよ。
心からそう思う。」
隆は顔を上げると私を見た。
お互いに埋めることは出来ない傷を確認しあっていた。
少しでも癒すことが出来たらいい。
もう充分すぎるくらいの時間はたったのだから。
「それじゃあ」
ブーツを履きながら言った。
「ああ。今日は悪かったな。
でも来てくれて嬉しかったよ。ありがとうな。」
目尻のしわが目に入る。
昔はなかった。今、それも全て香織のものだ。
「私も来て良かった。
ありがとう。またね。」
手を振り、扉を閉めた。
歩きながらマフラーを巻く。
外は寒いけど、日差しは暖かかった。
隆ときちんと話が出来てよかった。
私は少し気持ちが軽くなるのを感じた。
のんびりと帰路につく。
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