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「逃がしませんよ」
俺は今日が『今日』であったことを呪いたい。
3-Dの下駄箱に着くなり現れた会長に、心底そう思った。
この学校で唯一好きな先生の授業だからと、最後まで受けたのが失敗だったな。
サボって帰っちまえば良かった。
「さぁ、行きましょうか」
「やだ」
相変わらずの笑顔で、俺の腕を引きながら。
それに顔をしかめて手を振り払うと、会長は笑いながら俺を見つめた。
「煙草、返してほしくないですか?」
少し首を傾げて。
会長は悪戯っ子みたいに笑う。
「……返してくれんの?」
怪訝な顔でそう言うと、会長は意味深に俺を見据えた後背を見せた。
そしてそのまま歩き出す。
答えは自分で確かめろってか。
俺はクッと喉を鳴らして、会長の後を追った。
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