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しとしとと音なく降り続く雨の中
土手沿いの草が俺の足元を濡らし
厚い雲に覆われた空がどんよりと暗くなり始めた。
「ガキができた」
ポタ、と
傘から雫が落ちる。
「そうですか」
抑揚のない冷めた声で。
空気が震えてまた、雫が一つ堕ちた。
じゃりじゃりと靴底が擦れる。
振り返ることなく去っていく姿を見て、俺も踵を反した。
広がる距離。
近くない距離で向かい合っていたあいつがどんな表情だったのか。
雨に遮られた俺にはわからない。
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