太郎くんのこゆび

4/8
前へ
/20ページ
次へ
そのどぶ川の光景は、いつも見るどぶ川からは想像もつかなかった。 茶色く濁った水が激しく流れていた。 水位も、いつもの何倍も増加していて、大人でも頭が浸かるほどの水深になっていた。 「おおーすっげぇ!こんなの、初めて見た!」 興奮する宏樹につられて太一や太郎もはしゃぎ出した。 「ねぇー帰ろうよー。」 幸子だけは、どうしても3人のテンションに付いていけなかった。 「ねぇー3人とも、怖くないの?」 「そりゃ怖いよ。」 幸子の言葉に、太郎が答える。 「えー、太郎。お前、男のくせにこんなのが怖いのか?」 宏樹が太郎を挑発した。 「こ、怖くなんかないやい!な、なぁ、太一。」 「お、おうよ!」 太一も真顔で頷く。 「じゃあお前ら、今から度胸比べしようぜ。」 宏樹が口にしたこの言葉が、この後の悲劇のきっかけになった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加