太郎くんのこゆび

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「あの水門に登って帰ってくるだけでいい。」 宏樹が指差した先にその水門はあった。 鉄で作られている頑丈そうな水門。しかしながら、足場は悪そうだった。 「い、いいよ。」 太一と太郎は、声を揃えて頷いた。 「ねぇー、危ないよ。帰ろうよー。」 水門を登り始めた3人に、幸子が痺れをきらして言った。 「さっちゃんはそこで見ててよ。これは男の勝負なんだ。」 先頭に立って登る太郎が、幸子に言った。 「もうあたし、帰る。」 幸子は、夢中になっている男子をほっといて帰ることにした。 ちょうど3人が見えなくなるくらいまで歩いた時、幸子は聞いた。 誰かの悲鳴を。
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