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やがて、近所の人を連れて戻ってきた3人であったが、もうそこに太郎はいなかった。
「太郎、どうしたのかな。」
太一が呟く。
「まさか、太郎くんあのまま流されて…。」
幸子が手で顔を覆った。
「な、泣くなよ幸子。太郎はきっと大丈夫だよ。」
宏樹が幸子をなだめた。
「大体、ひろくんがいけないんだよ!水門に登るって言うから!」
「こ、こんなことになるなんて思わなかったんだよ!」
幸子の言葉に、宏樹も半泣きになりながら言った。
「お前達、今さら喧嘩してどうするんだ!それより、早く太郎くんを探すぞ!」
近所のおじさんが怒鳴った。
「太郎ー!」
「太郎くーん!」
付近の人達が、総出で太郎の捜索を始めた。
宏樹も太一も幸子も、泣きながら血眼で太郎を探し続けた。
しかし、夕暮れになっても太郎は依然として見つからなかった。
「太郎ーあいつ、無事だったらぶん殴ってやる!」
「見つからないはずないのに…。」
宏樹と太一が付近を探し回り、疲れ果てて水門のある場所へ戻ってきたころ、そこに幸子が立っていた。
「幸子、なにやってんだよ?」
宏樹が幸子に駆け寄り、その肩を掴んだ時、幸子の異常な体の震えに宏樹は慌てて手を離した。
そして宏樹を振り返った幸子は、不気味な笑いを浮かべてこう言った。
「太郎くん、まだここにいるよ。」
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