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建物の中は外観と同じかそれ以上にきらびやかに思えるほど、内装は立派な物だった。
ノーアは自分が育った石壁の狭い部屋との雲泥の差に、拘束されている事も忘れ、口を半開きにして驚く。
「義兄さん!どうしたのこの子!」
いきなりの声にそちらを見れば、ノーアを連れてきた男よりさらに若く、貧弱そうな体つきをした青年が走ってくる。
「塀の近くで見つけた。きっと逃げたか捨てられた奴隷だろう」
つむがれる言葉に暖かみはなく、フランクとはかなり差があった。
この男は人の心を持っていないのではないかと思うほどに。
「それはそうと、ヤン」
しかし、
「クララの様子はどうだ?」
『クララ』と言う瞬間だけ、男がヒトらしい感情を出したようにノーアは感じた。
「いつもと変わらないよ。外を眺めて…義兄さんの帰りを待ってる」
最後の方は消え入りそうだったが、男は気にする事なく嬉しそうな表情を浮かべた。
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