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女性は、アルノルトから一瞬視線を外したが、すぐに戻す。
ノーアは不思議に思い、一瞬動いた視線の先を振り返ってみる。
そこには、眉をハの字にしたヤンがいた。
「置いていって構いませんわ」
女性の端的な言葉にアルノルトは嬉しそうに返事を返し、ノーアの背中を遠慮なくおしやる。
手が使えないノーアは無様に顔から床に突っ込んだ。
「私は君の美しさのためなら何だってできる…何だって、やるよ。私の光[クララ]」
アルノルトはそれだけ言うと、ゆっくりと扉を閉めた。
「バカな男…根から切り離された花は、枯れて逝くだけだというに…」
クララの口調が変わり、扉に向けた瞳をノーアに移動させる。
視線が合えば、悲し気に微笑まれる。
「すまない、人の子よ」
静かに吐かれる言葉は大人しくうなずいてしまうほど力強かった。
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