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「今度お花見行こうね!」
「お花見弁当食べようね!の間違いじゃなく?」
「……お花見行ってお弁当食べようね!」
私と有澄は再び桜並木を歩きだす。
今日は少し風があるから花びらが舞う。
花見に行くなら早めに行かないと散っちゃうわね……
「……あんたの目的は弁当ね」
やっぱり花より団子……有澄らしいっちゃらしいけど。
この子は本当によく食べるから母さんに弁当手伝ってもらわないと……
そんなことをぼんやり考えながらちんたら歩いていると、少し先を歩いていた有澄が振り返る。
「目的?
もちろん美帆と出掛けること!」
……またこの子はそういう照れ臭いようなことをさらっと…
「……じゃあ弁当はいらないわね」
「ええぇぇえっ!?」
「慌てすぎよ馬鹿」
桜が散る
春が過ぎる
でもあんたは散らないで
ずっと咲き続けていなさいよ
もし散ってしまっても
私はずっと見ていてあげるから
「じゃあ私はこっちだから」
帰り道で有澄とは違う道へ歩きだす。
「…………」
「……有澄?」
突然立ち止まり黙り込んでしまった有澄に首をかしげる。
有澄はまっすぐ私を見ていた。
「葉桜も、見ててね」
聞き取りづらい小さな声。
桜の花びらに埋もれて消えてしまいそうな表情。
花びらがうざったい。
邪魔しないで、有澄の心を隠さないで。
「……うん?わかったわかった」
軽く笑って頭を撫でた。
何故有澄が泣きそうに笑ったのか
私にはわからなかった。
【End】
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