383人が本棚に入れています
本棚に追加
有澄は満足そうに笑っている。
私に会えるなら寂しくない?
何よ、それ。
人のことだけじゃなくて
ちゃんと自分のことも考えられるんじゃない。
「……葉桜見て何が楽しいのよ」
「うーん、私は楽しい!
美帆なら何でも楽しい!」
「それじゃあ別に葉桜じゃなくてもいいじゃない」
「……………あーそうだね」
そう、それでいい。
あんたはちゃんと自分の気持ちを出しなさい。
有澄が桜なら私は葉桜になるし
有澄が葉桜になるのなら、私は風になってやる
桜の花びらなんか一瞬で全部吹き飛ばして、周りの奴らに桜の思い出なんか残してやらない
私がすぐに葉桜にしてあげる
有澄が桜に見劣らないように
有澄にすぐに会えるように
有澄が何になったって
私はちゃんと見ててあげる
なんとなく有澄を見ると丁度ぱっちり目が合って、彼女はパアッと笑った。
有澄の笑顔はこの桜並木のどの桜よりも印象的だった。
.
最初のコメントを投稿しよう!