不思議な夢の帽子屋

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『怖い夢見たの? 怖い夢見たら、わたしに言ってね わたしが一緒にいてあげる だからね、もう怖くないよ』 「……帽子屋」 突然名を呼ばれて我に返る。 ベッドのすぐ横には私をじっと見つめるネムリネズミの姿があった。 ……いつの間に入ってきたのか。 何も言わずにボーッと彼女を見ていると、本人はばつが悪そうに肩をすくめた。 「……あ、えっと…勝手に入って……ごめん、ね。 ノックした…んだけど……返事、なかったから……」 まあこんな時間にノックしても大抵気付かないだろう。 でも私は起きていたにも拘らず返事をしなかったのだ。 謝罪の意味も込めて彼女の頭を軽く撫でて微笑む。 「……すみません、気付きませんでした。 こんな時間にどうしたんですか?」 ただでさえよく寝るのにこんな時間に起きるだなんて珍しい。 部屋は薄暗いままだったが、彼女の表情が少し暗くなったのが見えた。 「……怖い夢でも見ましたか?」 しかしふるふると首を横に振ると、その小さな手で私の頬にそっと触れた。 柔らかい感触と共に暖かい体温がじんわりと伝わる。 「……悪い夢、見た…?」 逆に彼女が同じような質問をしてきた。 突然そんなことを聞かれきょとんとしてしまう。 「……何故そう思うんですか?」 「なんとなく……帽子屋が、嫌な夢…見てるような、気が…したの。 だから……来ちゃった。 迷惑だった…?」 心配そうな声色。 そうか。ネムリネズミは夢占い師。夢に敏感なんだろう。 私の夢を感じ取って、心配して来てくれたのか。 私は彼女に微笑む。 「いえ、ありがとうございます。 でも大丈夫ですよ」 「嫌な夢の感じがする…。 ……昔の夢、見た?」 誤魔化しはネムリネズミには通用しないらしい。 私は思わず苦笑した。
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