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彼も彼女も、それ以降の授業が頭の中に入らなかったのは、言うまでもない。
彼は、何を言おうか悩み、緊張して。
彼女は、どんな返答が返ってくるのかの、期待と不安の狭間に立たされて。
そして、時はあっと言う間に流れてしまった。
彼は、昨日と同じ、校舎裏に来ていた。
今更ながらに、此処で待つ事がどれだけ緊張する事なのかを思い知る。
彼女とは違い、彼女への『告白』の返答をするだけなのに、緊張していた。
それは嫌な緊張では無くて、心地の良い胸の高鳴りであった。
「……うぅ、なんか緊張してきた……! 早く重富さん来ないかな?」
彼はそう呟いて、携帯を見る。
メールは着て居ない。
彼女がどんな気持ちでこの場所で、自分を待っていたか、彼は思い知る。
彼女の場合は、答えを知らなかった。そう、その場から逃げ出したくなるのは、当然の事と言えば、当然の事であった。
「……待った?」
彼女がそう言って、やって来た。
彼女の顔が赤いのは、夕焼けのせいだけでは無かった。
「……ちょっとね」
彼は顔を赤らめながら、苦笑いをする。緊張のせいか、少し口元がひきつっているが。
「……………………」
「……………………」
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