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しかし、彼の今現在の胸の高鳴りや、手の中の手紙の入った封の質感は全て本物なのだ。
「……ははっ。俺、告白されちゃったよ」
自分を想ってくれている人がいた事に、自然と笑みが溢れる。
と同時に、胸の中に何か暖かいモノを感じる。
『告白』されたらどうするか……。彼は返答を決めなければならない。
彼は頭を掻きながら、その手紙を大事そうに鞄の中に入れて、その場を後にした。
彼女は、走っていた。まるで恥ずかしさから逃げるように、胸の中の不安を誤魔化すかのように、家まで全力疾走をしていた。
「ただいまっ!」
彼女は家の扉を開けてそう言うと、一気に自分の部屋まで駆けて行く。
そしてそのままベッドの上に乗り、顔を枕で埋めた。
彼女の心の中は、彼に『告白』した事でいっぱいだった。
自分がどうやって家まで帰り着いたのか思い出せない程に。
「どうしよう……ついに『告白』しちゃった!」
自分でそう言って、恥ずかしくなり、足をバタつかせる。
「優~! 五月蝿いわよ~! 何を興奮してるのよ~!」
母親から注意され、彼女は足を停止させる。
そして、しばらく考えていると、どうしようも無い不安が、彼女の心の中を覆う。
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