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「美雪の場合その場で返事、貰えたじゃん」
「優みたいには逃げなかったからねぇ~」
「うぅ……それを言われると、なんとも……」
「あはは、まぁ、元気そうで良かったわよ。じゃあ、切るわね」
「うん、じゃあ、また明日学校でね~」
「バイバ~イ」
携帯が切れる。
彼女の心は、友人と話す事により、幾分か軽くはなったようであった。
しかし、不安と言うものは簡単に消え去りはしない。彼女は期待と不安が入り混じった感覚を胸に抱きながら、ため息をつく。
「……はぁ。明日、富永くんに会うのが怖いなぁ……。こんな気持ちを抱えたまんまじゃあ、勉強なんて手がつかないよ」
彼女はそう呟くと、制服から部屋着に着替え始めた。
彼は、家に帰ると直ぐに、自分の部屋に入る。
そして、手紙を鞄の中から取り出し、マジマジと見つめる。
初めて貰ったラブレター。
彼の心臓は、爆発してしまいそうに、鼓動が早い。
しかし、心地の良い胸の高鳴りを彼は感じていた。
今まではそれほど意識して、彼女を見てはいなかったが、何故か急に、彼女が素敵な女性のように思えてきていた。
「……い、いかん。お、落ち着け、俺」
彼はそう、呟いて深呼吸をする。
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