一話 告白~秘めた想い~

8/8
前へ
/15ページ
次へ
 彼の顔は赤い。  彼は、彼女に答えを出さねばならなかった。  断るも受けるも彼の自由意思である。しかし、答える事は、『告白』された側の義務であった。 「本当に、俺なんかで良いんだろうか? 俺以外にも、彼女にぴったりな男がいる筈なのに……」  彼は悩む。  彼女の真剣で、紳士な想いが通じたからこそ、彼は真剣に悩まざるを得なかった。  それが、『告白』してくれた彼女への礼儀であるし、簡単に決められる事ではないと言う、彼の気持ちの現れであった。  もし、彼女が軽い気持ちで告白していたら、彼はこの事にあまり、悩む事も無かったであろう。  何故ならば、人の想いと言うのは、どんな形にしろ伝わるものであるし、人は受け取った気持ちに対して、それ相応の行動をするからであるだろう。 「…………はぁ。どうしよう……」  彼は悩む。机から立ち上がり、ベッドの上に横になった。  部屋の天井を、彼はジッと見つめる。  胸の鼓動はまだ、治まらなかった。  恋。  それは、人間を人間たらしめる為に必要な精神状態。  それは、人間を成長させる為の、心の栄養。  例え、振られたとしても、それは貴方を人間として一段階成長させる為の糧になるであろう。  自分に嘘をついてはいけないし、その選択を後悔してはならない。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加