【サーモンのカルパッチョ】

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 真っ白の丸いキャンパスに描かれたオードブルは、見た目から既に私の食欲を刺激してくれる。中央から少し手前に薄いピンク色をしたサーモンが三切れ重なるように並べられており、右奥には弧を描くようにサラダが添えられていた。ルッコラとオニオンだろう、淡い彩りがサーモンと程よく調和している。  サーモンは自らの脂なのか、もしくはオリーブオイルによるものなのか、その表面はホールの照明を反射して輝いていた。左手のフォークでサーモンを突き刺し、右手のナイフでそのピンク色の白身に刃を立てると、まるでクリームでも切っているかのように軽い力でナイフが沈んでいく。  脂を纏ったナイフはそのままに、半分となったサーモンを口に運ぶ。柔らかい身をしっかりと噛み締める。自然で育まれたであろうその肉はしっかりと脂を抱えており、それが口の中で甘味として舌の上を転がる。口の中に広がるオリーブの香り、ほのかな酸味はレモンの果汁だろう。時折ブラックペッパーがピリリと舌を刺激する。それらの食感を全て一まとめにして喉に押し込んだ。  名残惜しそうに口に残るサーモンの甘味とドレッシングの香りの上からサラダを口の中に詰め込む。オニオンが口の中でシャキシャキと音を奏で、ルッコラが口の中の脂を綺麗に拭い取っていく。その青々とした香りがより一層とサーモンの甘味を引き立てる。  ふと彼女のほうを見てみると、手を止めてこちらを見ていた。料理は半分ほど進んでおり、私はそれを見て急いで口にサーモンを運んだ。
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