再出発

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 会社の整理が終わりに近づく頃、絵理は自分の判を押した離婚届けを俊介の前にだした。 「慰謝料はいりません。頼みますから、判を押して下さい」 「何故[?]」 「私、好きな人ができたの。あなたが構ってくれないからよ」 「宮本か[?]」 「違うわ。宮本さんはあなたの部下でしょ。もっと信用してあげて下さい」 「俺が判子を押さないって言ったら[?]」 「…」 「もう戻れないのか[?]」 「あなたの会社もう終わりよね。私、貧乏はいや」    俊介は立ち上がると、書斎に行き、判子を取ってきた。そして、判を押した。 「ありがとう」言ったのは俊介である。 「こちらこそ今までありがとう。明日、届け出してきます。あなたが会社に行った後、自分の荷物まとめて、出て行きます」  俊介は財布の中に入っていたお札を全部だした。20万円はあった。 「これしかないけど… 」  絵理は中腰になるとそのお金を掴み、俊介の頬に唇をつけ、部屋を出て行った。俊介はその夜、ソファーでまんじりともせず一晩過ごした。
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