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1週間後、母の検査結果が出る日。
仕事を終えた私は、明日が退院日になるかもしれないと休暇を取り病院へと急いだ。
母の病室へ入ると一人の医師が腰掛けていた。
(なんだこの人?)
そう思いながら、軽く会釈をして病室にある椅子にドカッと腰掛けた。
「どなたですか?」
その医師が私に問い掛けた。
(そりゃあこっちの台詞や!)
「娘です!」
「あぁ…だったら…」
その医師が何かを言いかけたその時、母の口から思いも寄らない事を聞いた。
「お母さん、癌なんだって。胃癌なんだって。」
一瞬目の前が真っ暗になった気がした。母の言葉を何一つ理解出来なかったからだ。
(癌!?は?なんで?お母さん死んじゃうの?てか癌の告知ってこんなに簡単に本人にすんの?)
頭の中がグチャグチャでパニクっている私にその医師が冷静な口調で話かけた。
「お母様の胃の細胞を採取して検査した結果、癌ということが解りました。胃癌です。」
「で母はどうなるんですか?」
「胃を全部摘出します。」
!?一瞬で涙が出そうになった。
母親が癌。しかも手術。しかも胃を取るなんて…。
あまりにも受け入れ難い現実に取乱しそうになった。
でも母親の顔を見て我にかえった。
母が今にも泣きそうな顔をしていたからだ。
私はグッと涙を堪え震える声でこう言った。
「なんだ胃をとるだけで助かるんだ。良かったじゃん!」
今度はその医師が驚いていた。なんて薄情な娘だと思ったに違いない。
でも私が取乱すわけにはいかなかった。
今一番不安なのは母なのだから…。
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