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ある年の8月のある日。
親元を離れて3年。
一人暮らしにも仕事にも慣れて、私はありきたりな日々を送っていた。
親とはなんとなく疎遠になっていたけど、その時の私はそれが当たり前だと勝手に思っていた。
今の私には親なんて必要無いし、親にも私なんて必要無い。
親孝行?そんなものは親がもっと年老いてからすればいいと本気で思っていた。
その日は明日からお盆休みという日で、私は仕事が終わった後に、祖父の初盆の為に帰省する伯母を空港へ迎えに行く事を母と約束をしていた。
ところがお昼になっても母から到着時刻の連絡は無かった。
『人に頼み事をしておいて連絡もしないなんて!文句言ってやる!』
最初はそんな気持ちで母親の携帯へと連絡を入れた。
プルルルル…
出ない…。
母は殆ど家族からしか連絡の入らない携帯をいつも持ち歩く人で電話に出ないなんて事は無かった。
その後、自宅にも電話を入れたがやはり出なかった。
『お母さんと連絡が取れないなんて…。おかしい』
なんとなく胸騒ぎがした私は父の携帯へと連絡を入れた。
私と父は家族の中で1番仲が悪く、まともに口を聞く事も無く5年以上が経過していた。
もちろん父の携帯を鳴らす事も無かった。
プルルルル…。
やっぱり出ない…。
なんと無く嫌な予感がした。
『何かあった』
そう確信した私は母の勤務先へと連絡を入れた。
プルルルル。
ガチャ。
「はい。○○会社です。」
「すいませんが○○(母)をお願いします。」
「今日はお休みされてますよ。」
「そうですか…有り難うございました…」
「すいませんがどちら様ですか?」
「娘です。」
そう答えると相手は少し驚いた様にこう言った。
「お母様、入院されましたよ…」
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