プロローグ

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さほど寒さを感じなくなってきている手を使い、カバンを手繰り寄せた。 カバンの中から、家族の写真を取り出す。 家族の最高にきれいな笑顔がそこにあった。 小学四年生の娘…… 五歳の息子…… 自分の横で微笑んでいる妻… 男は、自分の運命を悟ったらしい。 どうやら、生でその笑顔を見る事は二度とできないようだ。 そう気づいた時、今まであった死への恐怖が嘘のようになくなった。 「この…笑…顔を見ながら死ねる…のなら、私は…幸せだ…」 男は、消えゆく声でそうつぶやいた。
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