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その傍ら、ケインは黒のタンクトップ一枚のスターク相手に何やら質問していた。
「あの時サラ先輩に何したんですか? ルイスは何も話してくれないし、俺には何が起こったのかサッパリなんで」
しかしスタークは言葉を濁すばかり。らしくない姿にケインは苛立ちが募る。
「なんなんスか!? そんなに話したく無いんスか!?」
語調も段々と強くなっていく。しかしスタークの態度も一向に変わる様子が無い。
「ねぇ!?」
「そのくらいにしときなよ」
そんなケインの肩に誰かが手を乗せる。見ればそれはディーンだった。
「スタークにだって秘密にしときたい物があるのさ。何でも教えちゃって抜かれちゃ本末転倒だしね」
「でも!」
「ね?」
苛立ちに捕らわれていたケインはこの時初めて気が付いた。
語調は柔らかなものだが、ディーンの目は笑っていない。振り返ればスタークの表情に感情が無い。まるで能面のように。
高身長も相俟って、いつにも増して威圧を感じる。肩に乗せられた手がやけに重く感じる。
いたたまれなくなってケインはディーンの手を払いのける。何やら得体の知れない感覚が全身を覆う。
「……俺は負けないっスからね」
ケインはスタークとディーンを一瞥すると二人に背を向けた。一刻も早くその場を立ち去りたかった。
ケインの背には冷や汗が流れていた。
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