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私は聡のスパイクのニオイを嗅いでいた
聡が足にテーピングをつけ直している間、私は…めっちゃスパイクのニオイを嗅いでいた
聡と目が合った…
お互いに本気の目をしていた
「…っぶ!!何で叩くし!!」
「なんで嗅ぐし。
さっきまで泣きそうな顔してたくせによ、なんだそれ」
「嗅ぐと安心すんだよ!!」
「キレんな、意味わかんねえから。」
バカな私なんかと、聡はよく付き合っていられるななんて
別に思ったことはないけど
どうしてこんなに一緒にいてくれるのかな~くらいなら考えたことがある。
聡は間違いなく学年一のイケメンで、誰もが認めるチャラ男だ
彼女がコロコロ代わってたし、学年の三人に一人は聡の元カノだとかそんな噂がたつような人だし
だから私は一週間付き合っていられたらいいほうだとか思ってた
ぶっちゃけ、聡は恋=遊び的な考え方してんだろとか思ってたし、私も別にそれでもよかった
だけど、なんか聡って違かったんだよね。
「安心って…何で麻耶が緊張してんだよ。」
聡はスパイクを持つ私の手を握った…
その時になって気が付いた…私が震えていたことに。
「…緊張なんてしてねえし!
私冷え症だから手とか冷えんのさー。」
「……怖くねえよ、麻耶。」
「!!…………」
「足はなんともねえから。
絶対に優勝して、帰ってくるから。」
「うん…」
私は怖かった
出場を辞退させるのも
聡が怪我を押して走るのも
聡が敗けるのも
うちの酒呑みに嘲笑されるのも
聡がもう…走れなくなるのも。
だけど、本当は聡の方がずっと怖かったはずだよね
なのに私はいつもいつも聡に頼ってばっかいたよね
本当は怖いのに…私のために強がりをしてくれていた
ごめんね。
でもだから私は…こんなにも愛してんだよ、聡。
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