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「お節介かもしれないけどさ…
俺はもっとね、聡に皆とちゃんとお別れをしてもらいたいんだ。」
光太はそれしか言わなかった
また来るねなんて言って仕事に出かけて行った。
どうすればいいのか分からなくてどうしようもない時に、これ以上どうするの?と問われていたら…一体どうなってしまっただろう
光太に優しく悟らされるというのも…如何なものかとは思うけど。
だけど確かにそうだ
母さんだけじゃない
光太だってそうだし
麻耶の親父さんだってそう
麻耶のことだって……このままにしてはおけない。
分かってるけど…出来ることなら、このままただ消えてしまいたい
皆の中から俺が消えれば…全てが上手く廻る。
母さんは恋人と結婚するだろうし
光太は今みたいな苦労をしなくて済むし
麻耶の親父さんは素直に麻耶を愛せるだろうし
麻耶は…新しい人生を歩めるだろう
こんな生き地獄から皆が早く脱却するためには…俺がただ消えるしかない。
俺は特にこれといって…生きるのに不自由を感じたことがないから、死にたいなんて思ったことはない
だけど今はこんなにも不自由を感じている
息をしているのが苦痛に思える程の耐え難い不自由さだ。
生きているのは当たり前じゃん、いつか死ぬのも当たり前なんだし
構ってやろうが放っておこうが…命があるものは必ず死ぬんだ
“だったら変わらねーよな
いつ死んだって何も変わらないよな。"
俺は窓の外を眺める…
今日は風が吹いているだろうか?
“空、頼むから見ないで…。"
ナースコールの紐を伸ばして…
首に…グルグルと幾重にもきつく巻き付けた
俺が最期に願うのは…… 消えてなくなる こと。
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