死ぬまでにしたいこと

21/22
前へ
/202ページ
次へ
「お節介かもしれないけどさ… 俺はもっとね、聡に皆とちゃんとお別れをしてもらいたいんだ。」 光太はそれしか言わなかった また来るねなんて言って仕事に出かけて行った。 どうすればいいのか分からなくてどうしようもない時に、これ以上どうするの?と問われていたら…一体どうなってしまっただろう 光太に優しく悟らされるというのも…如何なものかとは思うけど。 だけど確かにそうだ 母さんだけじゃない 光太だってそうだし 麻耶の親父さんだってそう 麻耶のことだって……このままにしてはおけない。 分かってるけど…出来ることなら、このままただ消えてしまいたい 皆の中から俺が消えれば…全てが上手く廻る。 母さんは恋人と結婚するだろうし 光太は今みたいな苦労をしなくて済むし 麻耶の親父さんは素直に麻耶を愛せるだろうし 麻耶は…新しい人生を歩めるだろう こんな生き地獄から皆が早く脱却するためには…俺がただ消えるしかない。 俺は特にこれといって…生きるのに不自由を感じたことがないから、死にたいなんて思ったことはない だけど今はこんなにも不自由を感じている 息をしているのが苦痛に思える程の耐え難い不自由さだ。 生きているのは当たり前じゃん、いつか死ぬのも当たり前なんだし 構ってやろうが放っておこうが…命があるものは必ず死ぬんだ “だったら変わらねーよな いつ死んだって何も変わらないよな。" 俺は窓の外を眺める… 今日は風が吹いているだろうか? “空、頼むから見ないで…。" ナースコールの紐を伸ばして… 首に…グルグルと幾重にもきつく巻き付けた 俺が最期に願うのは…… 消えてなくなる こと。
/202ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加