13人が本棚に入れています
本棚に追加
生きることを諦めた俺が…今更生きることを望み始めた。
よく止まる時計みたいだな
手動でリューズを巻かないと時間の止まる、俺が母さんから貰った手巻きネジの腕時計みたいだ。
“そう言えば母さん……どうしてんだろうな"
最近は連絡もとってないし、会ってもいない
俺が入院してるのも知らずに、恋人とイチャイチャしているんだろうか…
て、母さんが悪いような言い方をするのはちげーな。
「聡~、ただいま~!」
物思いに耽っていると光太がひょっこり姿を現した
「起きてたんだね、ん?…何この絵。
聡が描いたの?」
「ああ、中が見えるように描いたから分かるだろ。」
光太は紙を近付けたり遠ざけたりして見て考えていた
「なんかこの生き物みたいなのが…どうしてもお尻に見えるんだよね」
「へえ…そりゃお前は変態だな。」
結局何なんだよと言って光太は笑った
「…あのさ、聡。」
「何だ?ゾウを丸飲みにしたボアの絵じゃねーぞ?」
「…え?それって、星の王子様ネタ?
そうだね、その絵はゾウには見えないよ、お尻だよそれじゃ。
そうじゃなくてさ…」
光太の視線に気付かないわけがなかった
俺の顔より少し下を、ずっと見ている…
「何見てんだよ。
この首の痕はあれだ…砂漠で会った意地悪なヘビがさ、故郷の星に帰してくれるって言ってさ。」
「冗談で誤魔化したりしなくていいから…そういう強がりはいらないよ。
生きてて よかった ……。」
「何言ってんだよ光太!?
お前、俺に迷惑かけられてばっかなんだぞ?
何が……生きててよかっただよ…」
「だってさ、そっちのほうが嬉しいから。
俺は、星の王子様みたいな終わり方…好きじゃないからさ。」
最初のコメントを投稿しよう!