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辺りを確認して、成功したのだと確信した。
中空に浮かぶ僕の足下には車があって、中に僕と女の子の体が横たわっている。女の子が僕に背を向けているのは、やはりよく知らない相手だからだろう。距離を感じるのだ。
大丈夫。君は僕の呼び掛けに応えてくれた。僕らは同志だ。距離と言ったって、せいぜい七輪の直径くらいのものなんだよ。
僕らの間の七輪では練炭の黒い塊が、小さな熱に表面を舐められていく。煙がもっと出るものと思っていたけれど、それほどではなかった。倒れないようにサイドブレーキで支えると、左腕の毛がちりちり痛んだ。
メタリックブルーの愛車を見下ろす。どんな無茶も引き受けて突っ走ってくれた。女の子も気に入ってくれたらしい。こいつが僕らの柩になるんだ。
ふいに、僕と目が合った。
赤く血走ったむき出しの目玉が僕を突き抜ける。僕の更に先の何かを睨めつけるように。顔が赤黒くむくんで鬼のようだ。
両足が、上がった。
僕は、成功したんじゃない。
やっと悟る。
体を棄てたのは僕だ。報復に体は、肝心な時に僕を締め出した。
左足がハンドルに足場を確保する。
右足を大きく振りかぶって……。
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