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「さて子供、君は何を望む?」
「……あなたは俺が力と使い方を望んだら何を引き換えに求めますか」
男は無表情のまま高いとも低いとも言えぬ声で淡々と問いかける。彼は一瞬だけ考え、直ぐさま問い返した。
「……死者の復活でもなく、巨大な力でもなく、望んだのは[力]と[使い方]か…………君は変わった子供だな」
男は彼の言葉に少しばかり眉を寄せた。
子供が望む事としては意図が理解し難いと言わんばかりに。
しかし彼は男を見据えて黙ったまま自身が問うた事の返答を待ってる。静かに流れていた筈の涙は既に止んでいた。
「……そうだな、その生命力を代償として求めよう……何、死ぬ事は無い。不死者になるだけだ」
男は彼を見つつ目を多少細めると、口元を僅かばかり緩めた。そしてゆっくりとその手を差し出した。
「君は今から[テュルフィング]を名乗れ。本名は私と君のみが知っていれば良い……さぁ、私の弟子となれ」
そして。
彼は何の迷いも無く、男から差し出された手を取った。
豪雨の中その場に残されたのは濁った色の水溜まりと一人の少女の死体だけだった。
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