【序】

2/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/82ページ
―暗い部屋の中。  羽虫の唸るような低い音が響いている。  二部屋分のリビングを繋げた40畳ほどの部屋は酷く乱雑で、到底人の住む場所とは思えない荒れ様だ。  コンクリート打ちっ放しの壁は冷え冷えとしており、恐らく窓の在るであろう場所は板切れで塞がれ、神経質な程に目張りされている。  部屋の中央付近には、作業スペースだろうか? 他よりも比較的片付いたスペースがあり、島状に取り残されたスペースには、事務机が置かれている。  無愛想な事務机の上には、凡そこの部屋には似つかわしくない大型のモニターが据えられ、煌々と光を放つモニターの向かいには、何事かを呟きながらキーを叩く男の姿があった。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!