プロローグ

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“戦わずに敵に打ち勝つ”  武術の極意。  不殺の理。  活人技の心髄。  自らや守るべき者のために発展した護身術。  致死性を極めた暗殺術。  究極の先の一撃。  敵を倒す事に特化した戦闘技能。  力には数々の違いがあれど、“戦わずに敵に打ち勝つ”とは到達すべき極限の境地の一つにあたる。  戦わずに勝利する。  ある意味理想であり、不可能とされる領域。  達人は達人の力量を識ると言う。  圧倒的な武力による戦闘回避。  遥か高みにいる地位と名声による、世論通念の拘束力。  力には数々の違いがあれど、その領域に踏み込める人間は少ない。  そして、彼は……  そのどれにも属さない感情と言うモノで、その領域に足を踏み込んだ。
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