第二章 禍津日

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目が覚めた時、自分が洞窟の中に居ることにガルンは気がついた。 鍾乳洞らしき空間は、何故か壁全体が鈍い緑の光りを放っている。 それが、付着した発光種の苔のおかげであるとは露とも思わない。 そのため洞窟内でもはっきりと目が利く。 「気がついた?」 視界の外から声がかかった。 声のトーンからガルンと似たような年の少女の声と分かる。 「誰だ……」 身体を起こそうとして、体が鉛のように重い事に気が付いた。 体の痛みは引いている。 だが、腕すら満足に動かせない。 真上から、金髪の少女の顔がひょこっと現れた。 コロコロした笑顔の上に赤い瞳が良く栄える。 「丸二日寝っぱなしだったからね。体の傷は驚異的に快復したみたいだけど、体力は回復してないでしょ?」 「……?」 目の前に現れた、屈託のない笑顔の少女に戸惑いを覚える。 「ハイハイは~い」 と、言いながら少女はガルンの上体を手で起こした。 「私はカナン、カナン・パルフィスコー。気軽にカナンって呼んでね!」 「……俺はガルン、ガルン・ヴァーミリオン」 太陽のような元気少女を、目をぱちくりさせながら見る。 この地方では見慣れない、巫女装束のような衣裳を身に纏っていた。
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