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「おっ、ようやく目が醒めたか坊主」
今度は男の声がした。
首を声の方向――右に向けると、そこには40前半の肉感的な男が立っていた。
手にはぴくりともしない鹿が握られている。
「雪の中で凍死仕掛けていたのを見つけた時には、かなりびっくりしたぞ。あの状態でくたばらないとは運がいい」
「……」
「なんであんな獣道に倒れていたんだ?」
「……」
「だんまりか? まあ、それでもいいがな」
男は無造作に狩りたてらしい男鹿を、カナンの方に向かって投げ放った。
「親父やるじゃん! 今日は鹿尽くしだね」
カナンは喜々として鹿を奥の方に引っ張って行く。
ガルンはその様を見送ってから、男を訝しむ様に睨みつけた。
「あんた……なんだ?」
ガルンの視線に敵意を感じて、男は砕けた笑みを浮かべた。
「なんだ……って、せめて何者だとか言ってくれよ。俺はグラハト。まあ、剣術士って奴だ」
「……お前はなんだ?」
「だから、俺はグラハト、グラハト・パルフィスコー。しがない剣術士だっつうの」
「お前は【何なんだ】と聞いている」
ガルンの再三の質問にグラハトは苦笑いを浮かべた。
「お前、解るのか?」
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